道無き道を行く
親→聴覚障害教育優先 県→体調と安全面優先
こざるの就学に向けた活動5歳(幼稚部年中組)からでした。
当時のこざるの状態は、
- 生活には医療的ケアが必要。気管(カニューレ)からの吸引と胃瘻からの注入。
- 体幹と平行感覚にまだまだ問題があり、一人で歩けはするものの安定した歩行とは言えず、常に側についていなければ危ない状態。
- 体が弱く、気管支炎や肺炎で入退院を繰り返していた。
- 発達・学習に必要なのは聴覚障害の教育。重度障害で全く聞こえていないので、通常の教育(聴覚優先)では言語を習得することもできない。手話で学習が出来るようにしたい。
- 発達状況は同年代の子の半分ぐらい。
親としては子供にはちゃんと言葉を習得して欲しいし、これから先の成長を考えると”重度聴覚障害”を優先して教育を受けさせたい。
幼児期には難聴児のリハビリ施設に通い、2年間だけでしたが聾学校の乳幼児教室・幼稚部にも通っていました。その流れで、今後の発達を促すためにも同じ聴覚障害の子供達と一緒に学ばせたかったのです。
県の教育委員会からは1〜3の項目を重視して、看護師が配置された特別支援学校の肢体不自由部を勧められました。(手話には対応しているわけではない)
聾学校の方からは1〜3を理由に(環境が整っていないという事で)断られました。実際希望していた聾学校には聴覚障害はあってもそれ以外はいわば健常者と同じ子供達がほとんどなので、”特別支援学校へ行く”というより”一般小学校へ行く”というイメージです。看護師も配置されていませんでした。
建物は当然エレベーターはありませんし、段差も普通にあちこちあります。教室に続く廊下は特別教室棟以外は外廊下で、屋外になります。
当時は教室のエアコン設置も完全ではなく、外気温の影響をまともに受ける環境でした。(内廊下が一般的な県内の他の一般小学校より、環境がナチュラルです)
1〜3の条件を持つこざるには少々厳しい環境ではあったので、肢体不自由部の学校も考えた方がいいのかと、見学しに行きました。
学区の問題(通学時間)
特別支援学校にも学区がありますが、基本的に一般中学校の学区が基準になっています。複数の中学校区との合区なのですが、こざるの地域の特別支援学校(A校)はかなり遠方になり、車で50分ほどかかります。(市街地の渋滞を抜ける必要あり)
気管の吸引が必要な状態で、50分車を運転して毎日通うのは出来るだけ避けたい状況です。
当時こざるは常に痰と誤嚥した唾液がカニューレから流れ出ている状態でした。咳き込みも多く、後部座席のチャイルドシートに座っている様子を、後部座席専用のミラー越しに気にしながらの運転は気が気ではありません。
体調を崩して病院へ行くときや、長い時間車に乗る時は実家の母やお父さんに運転してもらい、私はそばでつきっきりという感じです。
加えて一番深刻なのが、運転する私が医療的ケアの関係で慢性的な睡眠不足で、どうしても時々居眠りしそうになってしまう事です。
運転時間が長かったり、渋滞でゆっくりとなるとかなり危険で、今まで居眠りが原因の事故を起こさなかったのが奇跡の状態です。(注意力がなくなって、駐車場で車をバックで出そうとしたら、死角に止まっていたトラックにぶつかった事はある。)
出来るだけ車に乗ってる時間が短くて済むよう、難聴児のリハビリ施設まで車で10分・かかりつけの大学病院まで20分で行ける所にわざわざ引越しして生活していました。
ちなみに聾学校はA校のすぐ隣です。乳幼児教室は週1日でよかったのですが、幼稚部には毎日はとても通えず、基本的に週2〜3日2〜3時間だけ通っていました。それでも私が通学させ続ける事が難しく、こざるの体調にも不安があったので、幼稚部には1年間の在籍で諦め、ずっと続けていた難聴児のリハビリ施設だけ週2日通っていました。
教育相談を始めた頃は聾学校の幼稚部で、幼稚部の教頭先生が窓口になっていました。通学距離の問題を相談すると、全県区の支援学校(B校)を紹介されました。
そこは車で40分。あまり変わりが無いのですが、とりあえず見学に行きました。主に重度の心身障害者の施設に付属して建てられた学校だったので、病院もあり、学校生活での安全面は問題ありません。
見学の時、こざるが廊下を歩き回り、プレイルームのマットででんぐり返りやゴロゴロ転がって遊ぶのを見た案内の方が、”胃瘻して気管開けててこんなに動く子を初めて見た”、と驚かれました。そして、”ここは重度の子達がほとんどなので、活動的なお子さんには物足りないと思います”と。さらに”聴覚障害なら聾学校へ行くことを勧めます”と言われました。
いやいや、聾学校は医療的ケア児に対応してないからダメと言われてるんですけどね。
手探りの就学活動
A校は見学だけして終わり、通える範囲の肢体不自由部がある支援学校はあと一つでした。(C校)
そこは実は自宅から一番近く、車で20分ほど。かかりつけ大学病院も学校から車で10分ほどで行ける上に、隣に病院もある支援学校でしたが、残念なことに学区外。
A校は肢体不自由部もあり看護師も配置されているけれど、近くに大きな病院はなく、一番近い医ケア児に対応できる病院が、B校がある病院でした。(割と近いエリアに2校がある)
相談先の教頭先生が、学区外でも希望すれば別の学校に行ける制度があるから大丈夫、と言ってくれていたのですが、そんなに簡単なことではありませんでした。
まずC校に見学に行き、教育相談をしました。(この時点で6歳。年長組の年齢)
こざるを受け入れることは可能という事で、ホッとしたのですが。(ただしここでも手話対応は難しいと言われる)
- まず、C校での教育相談の時に、A校に形だけでも教育相談をしてから県に希望を出してくださいと言われる。(学区内の学校で就学相談→変更という手続き上の順番)
- A校に行くと、そもそも肢体不自由3級以上(当時)の手帳がないと支援学校には入れないと初めて知らされる。
- 手帳は聴覚障害しか持ってなかったので、急遽大学病院のリハビリの先生に相談。だいぶ歩けるようになっていたので、認定されるのか不安だったが、先天的な機能の問題もあったので、無事取得。ついでに該当しそうなものは全て申請してこざるの障害が手帳でわかる状態にする。(療育手帳も取得)
- A校から県へ、就学相談に来たけれどC校に行きたいという希望があります、という連絡が行く。(だったと思う。この辺り記憶があやふやです)
ここまでを年長組年齢の11月末までに終了し、12月に就学前健康診断(対象年齢の子供全員の)を地域の小学校で受けました。こざるも一般の子供に混ざっての受診だったので学校の方に障害の事情を説明し、控室は別で(他にも要配慮の子がいた)受診の順番も要配慮の子が先にしてもらえて助かりました。
というのもこざるの住む地域の小学校は子どもの人数が多く、検診日に初めて全員が揃っているのを見た時、あまりの多さと騒がしさに(100人は軽く超えていた)思わず歩行が不安定なこざるの身の危険を感じてしまったからです。
話が少しそれましたが、その後、市の教育委員会から”C校を希望してるとの事ですが、学区外なので認められません”という連絡が来ました。(市から来たというのは、おそらく就学前健康診断と同じで、地域の子供がどこに行くか最初に管轄しているからではないかと思いますが。)
A校への教育相談でその件は問題ないと思っていたので驚きましたが、とりあえず、こざるの現在の状況では長時間の車での通学は難しいことなどの理由を話しました。
ところが、支援学校へ通う子達は長時間通学は当たり前だそうで、通学時間が長いのは理由にならないと言われました。学区外は、よほどの理由がない限り認められないとも。
以前相談した先生の話では簡単に認められるだろうと言われていただけに戸惑いを隠せませんでした。
就学問題②へ続く